妊娠中は免疫が低下し、いろいろな菌やウィルスへの抵抗力が弱くなります。
妊婦さんが感染症にかかると、お腹の中の赤ちゃんにも感染してしまう「母子感染」を起こすことがあります。
母子感染の中でも、赤ちゃんに重篤な症状を引き起こす感染症の総称を「TORCH(トーチ)症候群」といいます。
今回はその中の「R」。
Rubella=風疹についてのお話です。
- 先天性風疹症候群とは
- 妊活前の風疹抗体検査と風疹ワクチンについて
- 妊娠中の感染対策について
- 産後の風疹ワクチン接種について
先天性風疹症候群
先天性風疹症候群は、妊婦さんが風疹にかかり、風疹ウィルスがお腹の中の赤ちゃんにも感染してしまうことで引き起こされます。
3大症状は先天性心疾患、難聴、白内障です。
先天性心疾患と白内障は妊娠初期3か月以内の感染で起こりますが、難聴はそれ以降の感染でも起こります。しかも高度難聴であることが多いと言われています。
これ以外には、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球などの症状がみられます。
妊娠中に風疹にかからないことがとても重要ですね。
抗体検査とワクチン接種
風疹抗体を持っているかどうかは採血検査で調べることができます。
HI法という検査方法の場合、結果はこのようになります。
- 8倍未満:免疫なし
- 8倍・16倍:免疫不十分
- 32倍・64倍・128倍:免疫あり
- 256倍以上:最近感染した可能性がある
8倍未満~16倍の方はワクチン接種が推奨されます。
256倍以上の方で妊娠している場合は、最近感染したものかどうか、つまり妊娠してから感染したかを調べる検査をします。
妊活前の抗体検査とワクチン接種
妊娠中は風疹ワクチンは接種できません。
なので妊娠を希望している場合は、妊活前に抗体検査を受けることをおすすめします。
検査の結果で抗体がない場合は、風疹ワクチン(麻疹との混合ワクチンでも可)を接種し、2か月程経過した後で妊活を始めます。
ワクチンは妊娠の可能性がないと判別できる時期に接種することが大切です。
家庭内での感染を防ぐためには、夫を中心をする同居家族にも協力を得て、一緒に抗体検査やワクチン接種を受けることが一番です。
妊婦健診での抗体検査
初回の妊婦健診ではいろいろな感染症の検査をするのですが、その中に風疹抗体検査も含まれています。
妊娠前に風疹について知らなかった方は、この検査で免疫の有無が分かります。
免疫がない場合、ワクチン接種はできないのでとにかく感染しないように気をつけて生活する必要があります。
夫などの同居家族から感染しないように、家族に抗体検査とワクチン接種をしてもらいましょう。
男性は内科を受診されることが多いですが、妊婦健診に一緒に来て検査を受ける方もいます。
抗体検査やワクチン接種のみであれば対応している産婦人科は多いので、通院中の病院に確認してみてください。
産後の予防接種
免疫のない方は、産後できるだけ早く風疹ワクチンを接種することが推奨されています。
お産のあとはいつでも風疹ワクチンの接種ができ、授乳中でも問題ありません。
風疹抗体を持たないお母さんから生まれた赤ちゃんは、もちろん風疹抗体を持ちません。
赤ちゃんが風疹ワクチンを打てるのは1歳になってからです。
自分自身に免疫をつけて風疹に感染しないようにすることで、赤ちゃんを守ることにもつながります。
また次の妊娠を予定している方は、早いうちに接種しておくと安心ですね。
退院後は赤ちゃんがいて外出するのが大変なので、入院中に接種してしまうのがおすすめです。
退院後だと、2週間健診や1か月健診の機会に済ませると楽ちんだと思います。(2週間健診の実施は市区町村によります)
感染対策のまとめ
- 免疫の有無に関わらず、流行期や流行している地域では人ごみを避ける
- 妊活前に夫・パートナーと一緒に抗体検査、風疹ワクチンの接種を済ませる
- 妊娠中で免疫がない場合は、同居家族の抗体検査、風疹ワクチンの接種を行う
- 妊娠中に免疫がない場合は、産後に風疹ワクチンを接種する
免疫があっても風疹ウィルスに濃厚接触した場合には、先天性風疹症候群を発症したという例もあります。
風疹の流行が確認された時には、免疫の有無に関わらず、人ごみを避けたり不要な外出は避けることをおすすめします。
免疫がない妊婦さんでは、夫やパートナーなど身近にいる人と一緒に感染対策をすることが大切です。
風疹ワクチンを接種しても抗体がつきにくい方もいますが、厚労省からは1回の予防接種で約95%、2回では約99%の方が免疫を獲得すると報告されています。(参考:予防接種が推奨される風しん抗体価について)
また不活化ワクチンであるインフルエンザワクチンとの同時接種も可能です。
産後に両方接種したい場合は、入院中に同じ日に接種してもいいし、心配であれば2日に分けて接種することもできますよ。
不安がある場合には通院中の病院に相談してみてください。