みなさん、お産する病院はなにを基準に選びますか?
「安全第一なので総合病院」「特別感を味わいたいからクリニック」などポイントは人それぞれだと思います。
私は現在、クリニックで助産師として働いていますが、「ごはんがおいしいと聞いたので」「ごはん楽しみにしてました」と言われる方が多いです(笑)
確かにクリニックの食事は豪華なのですが、総合病院の食事はしっかりカロリー計算され栄養バランスが考えられています。
「赤ちゃんを預かってもらえるか」「ごはんがおいしいか」だけでなく、お産をする病院にはいろいろな特徴があります。
すでにお産をする病院が決まっている方や、地域に産院が少なくて選べないという方も、自分がお産する病院にどういう特徴があるのか確認しておくことをおすすめします!
通院しやすい距離
自宅(里帰り先)と病院の距離はとても重要ですよね。
妊婦健診は初めは4週間毎ですが、24週以降は2週間毎、35週以降は1週間毎になります。
職場から近くても1週間毎の健診の時期には産休中です。
妊婦健診外でも受診することがあったり夜間に何かあった時など、自宅からすぐに行ける距離だと楽ですし安心です。
そして何よりお産で入院する時に、病院が近いと安心だと思います。
経産婦さんだと、上の子を預けたりして病院に向かうまでに時間がかかります。
「何分で来れますか?」と確認した後、たいだい倍くらいの時間で病院に到着されることが多いです。
「15分と答えた時は30分後」「30分と答えた時は1時間後」という感じですね。
降雪地帯で予定日が冬の場合も要注意です。
総合病院or有床クリニック
総合病院
総合病院では何かあった時も院内で対応できることが多いです。
必要時は小児科医立ち合いでお産ができたり、手術室の受け入れも緊急帝王切開は最優先レベルとなっています。
持病があったり、他科の受診が必要になった時もひとつの病院で済ますことができます。
何か検査が必要になった場合も、たいていの検査は院内で完結できるのでわざわざ他の病院に行く必要がありません。
また、金銭面が心配な場合には公的病院(県立病院や市立病院など)を選ぶのもおすすめです。
有床クリニック
クリニックは「特別感」で選ぶ方も多いですよね。
食事が豪華だったり部屋がきれいだったり。
出産は人生で何度もあることではないので、特別な時間を過ごしたいという方もいると思います。
また総合病院よりも待ち時間が少ない、家から近いなどの理由で通院しやすいと感じる人も多いようです。
食器類やバスタオル、スリッパ、ティッシュなど準備されていて、入院時の荷物も総合病院に比べると少なめです。
サービスは入院中のエステ、写真のプレゼント、出産プレゼント、産声録音など各クリニックで様々です。
ただ必要な場合には近隣の総合病院へ紹介となったり、緊急時には母体搬送、新生児搬送となる可能性もあります。
NICUがあるか
NICUとは、新生児集中治療室のことです。
より安全性を重視したいという方は確認しておきべきポイントです。
NICUでは、早産(37週未満)や低出生体重児(2500g未満)で生まれた赤ちゃんが入院するというイメージがあると思います。
ですが、早産などでなくても生まれた後に治療が必要で入院する赤ちゃんも多く、意外と身近な施設なのです。
東京都保健医療局より出生数に対するNICU等への入院児の割合
- 2015年 5.9% → 16人に1人
- 2021年 9.1% → 11人に1人
もしもの時にもNICUが同じ病院内にあれば、すぐに赤ちゃんの様子を見に行くことができます。
NICUがある病院は二次・三次救急に指定されている病院がほとんどなので、緊急搬送を受け入れて病床が埋まってしまうことももちろんあります。
それでも生まれた時に何かあれば、NICUで働く小児科の先生が初期処置をしてくれるという安心感があります。
NICUはどこにでもある施設ではないので、これを基準に病院選びをする方はあまり多くないかもしれません。
お産する病院にNICUがあるかを確認したり、近隣のNICUがある病院を確認しておくといいと思います
母児同室か別室か
母児同室か別室かというのも大きなポイントです。
母児同室のメリット・デメリット
完全母乳を目指す方は、母児同室は絶対条件です。
赤ちゃんは昼夜逆転で、日中よく寝て夜は起きてよく泣きます。
話では聞いたことがある方も多いと思います。
初めての母児同室の日に「夜は寝ませんよ」「ずっと泣きますよ」とママさんに説明しますが、それでも「寝ません」「ずっと泣いてます」とナースコールがきます。
つまり、どれだけ話で聞いていても実際体験してみないと分からないということです。
休息時間が少なくなる分、赤ちゃんとずっと一緒にいるので授乳や赤ちゃんに関する疑問も出てきやすいです。
退院する前に赤ちゃんのことをよく知れたり、疑問や不安を解消できるのは大きなメリットです。
母児別室のメリット・デメリット
母児別室の間は3時間毎くらいに授乳に呼んでもらえます。
日中は同室して夜間は別室という病院も多いようです。
ただ肝心なのは夜間の過ごし方なんですよね。
新生児の日中と夜間は別人かというくらい活気が違います。
その対処方法を知らないまま退院すると、家に帰ってから戸惑うことも方もいると思います。
ただ入院中はしっかり休息時間を確保できるのがメリットです。
夜は赤ちゃんを預けてゆっくり休みたいという方が母児同室の病院を選ぶと、「こんなはずじゃなかった」となります。
母児同室だから全く預けられないということはありませんが、近隣に母児別室を取り入れている病院がある場合は他の条件と合わせて再検討してみてもいいと思います。
以前は母児別室が主流でしたが、最近では母児同室の病院が増えています
BFH:赤ちゃんにやさしい病院の認定
BFHとは「Baby Friendly Hospital」の略で「赤ちゃんにやさしい病院」とも言います。
WHOとユニセフから認定を受け、「母乳育児成功のための10カ条」を実践している病院です。
分かりやすくいううと、母乳育児を推進している病院ですね。
「母乳育児成功のための10カ条」はWHOとユニセフの共同声明です。
1.母乳育児についての基本方針を文書にし,関係するすべての保健医療スタッフに周知徹底しましょう。
引用元:UNICEF/WHO 母乳育児支援ガイド|UNICEF/WHO
2.この方針を実践するのに必要な技能を,すべての関係する保健医療スタッフに訓練しましょう。
3.妊娠した女性すべてに母乳育児の利点とその方法に関する情報を提供しましょう。
4.産後30分以内に母乳育児が開始できるよう,母親を援助しましょう。
5.母親に母乳育児のやり方を教え,母親と赤ちゃんが離れることが避けられない場合でも母乳育児を維持できるような方法を教えましょう。
6.医学的に必要でないかぎり,新生児には母乳以外の栄養や水分を与えないようにしましょう。
7.母親と赤ちゃんがいっしょにいられるように,終日,母子同室を実施しましょう。
8.赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょう。
9.母乳で育てられている赤ちゃんに人工乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう。
10.母乳育児を支援するグループづくりを後援し,産科施設の退院時に母親に紹介しましょう。
ざっくりいうとこんな感じです。
- 母乳育児の利点や情報、やり方を教えてもらえる
- 基本的に完全母乳を目指しミルクなどは補足しない
- 哺乳瓶やおしゃぶりも使わない
- 基本的に24時間母児同室をする
このケアは「希望する方に」行っているわけではなく、基本的には「入院患者さん全員」に行われるケアです。
完全母乳を希望している方にはケアが充実していておすすめですが、授乳に特にこだわりのない方は覚悟が必要となります
日本では2023年8月時点で61施設が認定されています。
「緊急搬送先の病院がBFH認定の病院だった」ということもあり得ますので、こんな病院もあるんだなと知っておいて損はないと思います。
特別な希望がある場合
「1人目は帝王切開をしたが今回は自然分娩にトライしたい」「無痛分娩がしたい」など具体的な希望がある方は、対応している病院を選ぶ必要があります。
また「この先生に診てもらいたい」という方はその先生がいる病院を選ぶことになりますね。
ただ、妊婦健診では担当の先生が診察していても、お産の時には別の先生が診ることもあります。
クリニックでも365日24時間、常に同じ先生が診ているとは限らないので、あらかじめ理解しておきましょう。
まとめ
お産や授乳に関しては「こうしたい」という希望があっても、最後までどうなるか分かりませんよね。
心の準備としてイメージ作りは大切ですが、あまり理想で固めすぎないように柔軟に対応できる心構えも大切です。
せっかく選んだ病院でも、医師に他院をすすめられた場合は、安全のためにそれに従うことをおすすめします。
近隣にお産できる施設が少なく病院を選べない方も多いと思います。
里帰りする予定だったのにできなくなってしまう方もいます。
施設の特徴を知っておくことで「こんなはずじゃなかった!」から「まあこういうこともあるよね」と考え方をシフトできるといいなと思います。